★遺言書について知っておくべきこと
遺言書ひとつあると、トラブルはかなり防ぐことができます。しかし、せっかく遺言を書いても財産の中身や形式が正確でないと意味がなくなってしまいます。また、相続人全員のことを思いやった内容でないとかえってトラブルのもとになります。
遺言書の撤回
一度書いた遺言書の内容は、改めて遺言書を書き直すことによって、いつでも撤回することができます。前の遺言と後の遺言が抵触する場合には、その抵触する部分については後の遺言で撤回したものとされます。つまり、内容の異なる複数の遺言があった場合には、日付の新しいものが有効になります。
また、遺言が遺言後の生前処分などと抵触する場合には、遺言は撤回したものとされます。例えば、A不動産を甲さんに相続させるという遺言を書いた後に、不動産を乙さんに売却した場合には、甲さんに相続させるという遺言を撤回したことになります。
なお、撤回されていない部分の遺言については有効のままです。
負担付遺贈
例えば、「長男甲野一郎に現金100万円を遺贈する。ただし、長男甲野一郎は、遺言者の愛猫タマの世話をすること。」「長男甲野一郎に現金300万円を遺贈するかわりに、長男甲野一郎は遺言者の妻甲野花子に対し、その生活費として、毎月10万円を支払うこと。」のように、遺贈を受ける人に一定の給付義務を課した遺贈を負担付遺贈といいます。
負担付遺贈を受ける人に、遺贈された財産の価額を超えない範囲で、その負担を履行する義務を負わせることが出来ます。ただし、負担付遺贈の場合も、受遺者において遺贈を承認するか放棄するかの選択権があるため、自由に遺贈を放棄することができます。
また、義務を果たさない場合には、相続人や遺言執行者は、家庭裁判所に遺言の取り消しを求めることができます。
遺言執行者
遺言の中で「認知」をする意思表示があれば、遺言執行者が認知届を提出したり、相続人以外の人への「遺贈」がある場合には、遺言執行者が引渡しや登記をしたりします。そのため、これらの内容を遺言に記載する場合には合わせて、遺言執行者を選任しておいた方が望ましいでしょう。
また、遺言の内容が遺言執行者による執行を要しない場合でも、相続人同士の間で利害が生じる事項があるときは、第三者的立場の遺言執行者を指定しておけば、無用な紛争を避けることができます。
なお、遺言執行者のみが執行できるものは次の通りです。
- 認知
- 推定相続人の廃除・取消(廃除された相続人は相続権を失い、遺留分を請求することも出来なくなります)
遺言執行者は、未成年者と破産者以外だれでも指定することができます。相続人中の1人であったり、弁護士や司法書士、税理士などの専門家や信託銀行などの法人もなるケースが多いです。確実な遺言執行を望む場合には、遺言執行者を指定しておきましょう。
遺言理由書
遺言書が法的効力をもつのは、財産の処分方法とその他認知や後見人指定といった法律で決まった事項のみです。しかし、その解釈に疑義が生じた場合に、遺言書とは別につくっておいた遺言理由書のようなものがあれば、解釈の指針を示すのに効果的です。
財産の表示
財産の中に不動産がある場合、登記簿どおりに記載しないとその部分が無効になってしまいます。遺言をもとに名義変更の登記をするとき、法務局は、本当にそのような登記をしていいかどうか遺言書を確認したうえで手続をします。そのときに、不動産の指定の仕方が登記簿謄本の記載と異なると遺言の内容を実現できなくなってしまいます。
遺言書作成の際は、法務局から登記事項証明書(登記簿謄本。1通1,000円)を取り寄せてからとりかかりましょう。
遺留分減殺
遺言書に書いたことがすべてそのとおりになるわけではありません。相続人にはそれぞれ遺留分というものがありますので、財産の承継先に指定されなかった相続人も、遺留分の範囲であれば、多く受け取った人に対し相続財産を請求することができます。
ただし、兄弟姉妹には遺留分がないので、法定相続人である兄弟姉妹に譲る財産をゼロとしても問題ありません。遺言するときは、遺留分を有する相続人に充分配慮する必要があります。
誰が相続人になるのか
相続人になる方を把握しておく必要があります。相続人以外の方に財産を譲りたい場合はできればその方の戸籍もとっておくと確実です。
その方が後日転居され、特定できなくなる可能性もあるからです。
遺言書作成後の新たな財産取得
できる限りあらたな預金口座などをつくるのは避けることが望ましいでしょう。取得した財産があればその財産についての新たな遺言書を作成するようにしましょう。
生命保険金の受取人の変更
保険契約時は受取人を奥様としていたが、長男に変更したいという場合、遺言書で変更することができます。ただし、相続人が保険会社にその内容を通知しなければ、保険会社が知らずに奥様に支払っても文句は言えません。遺言で受取人を変更したい場合は、司法書士や弁護士といった人を遺言執行者に指定しておくと安心です。